top of page
​卒業論文2011

2011年度は、以下の6本の卒業論文が提出された。

 

①★「アフガニスタン戦争決定過程~ブッシュ政権が用いた『歴史の教訓』と『21世紀の新しい戦争』」は、アーネスト・メイの「歴史の教訓」論を援用しながら、米国のアフガン戦争開戦時に「歴史の教訓」がどのように適用されたについて分析している。参考資料や文献を豊富に駆使しながら、決定の本質に切りこんでいる。

 

「沖縄ソフト・パワーの可能性~ジュゴン訴訟の分析を通して」は、沖縄のソフトパワーとしてジュゴンを再定義しながら、基地問題の解決に向けてのジュゴン訴訟のあり方を考察した。その発想にオリジナリティーを含んでおり、基地問題の解決に向けた方法論に一石を投じている。

 

「科学技術創造国の日本の維持のために~教育面(事業・施策)の有効性」は、日本の科学技術を維持する方法について、「教師の理科離れ」・「スーパーサイエンスハイスクール・「留学生政策」・「大学のリクルーティング戦略」という4つの視点から重層的に分析した。日本の科学教育政策の問題点の分析と提言を行っており、読ませるものとなっている。

 

「文部科学省によるPISA調査の活用の妥当性を問う」は、文部科学省が行う教育政策とPISA調査の因果関係を立証することによって、日本の教育行政の問題点をあぶり出そうとした論文である。PISA調査に注目した部分が独自の視点で興味深い論稿である。

 

「エゴグラム分析と政治過程モデルを用いた普天間基地移設問題の分析」は、鳩山元首相の普天間基地問題における政策転換について、政策決定者個人の認識に注目しエゴグラムを用いて分析したものである。エゴグラムを用いるという手法にオリジナルティーが出ている。

 

「沖縄をめぐる抑止力の間主観と安全保障問題~原子力の間主観議論を通して」は、在沖米軍にまつわる「抑止力神話」と原子力発電にまつわる「安全神話」に共通点を見出し、国際関係論のコンストラクティビズムが言うところの「間主観性」の観点から、沖縄基地問題の解決に向けて提言をおこなうという、おそらくまだ誰もやったことのない視点からの意欲作である。

 

いずれの論文もオリジナリティーを出すために果敢に挑戦していて、3年次のゼミ論より大きく成長を感じさせるものであった。他と比較して勉強量の多さを感じさせる①の論文を最優秀論文とした。

卒業論文2012

2012年度は、以下の9編の卒業論文が提出された。

 

①★「沖縄の世界遺産について-管理状況から保全・活用方法を考察するー」は、沖縄のグスクなどの世界遺産がどのように保全活用されているか、市町村での聞き取りを含め現地調査を行い、その現状と問題点、改善方法について具体的提言をおこなったものである。先行研究もあまり多くない状況の中で、インタビューなども含めた実地調査をして研究を進めたことは高く評価できるし、また、それゆえ、オリジナリティーある研究となっている。

 

「日韓の職業意識の比較-なぜ韓国人は安定志向であるのかー」は、日韓の大学生に対して直接行った職業意識アンケートに基づき、双方の学生の職業意識の差はどこから生じたかという点に迫った。日韓の職業教育政策の比較を行った点で興味深いことと、アンケート調査も一読に値する。

 

「中東戦争の原因分析とその比較-ディフェンシブ・オフェンシブの側面から―」は、第一次中東戦争から第四次中東戦争までを攻撃的リアリズムと防御的リアリズムの双方の視点から分析し、4つの戦争を比較した。多くの事例を扱ったことで、より戦争の原因の本質に迫っているのが評価できる。

 

「朝鮮戦争開戦原因についての考察-攻撃的側面と防御的側面―」は、朝鮮戦争の開戦原因に対して、歴史学的視点と国際政治学的視点の双方から接近したものである。北朝鮮の南侵に関して、攻撃的リアリズムと防御的リアリズムの視点から分析した点が非常に興味深く、オリジナリティーを創出している点である。

 

「こども兵士問題と社会復帰支援-シエラレオネの事例からー」は、こども兵士の社会復帰に関して、「心のケア」という側面から論じている。罪を犯した少年の心のケアに関して、日本での事例も参考にして論じている点で注目に値する。

 

「韓国における北朝鮮認識-映画分析を通してー」は、韓国の金大中大統領時代(1998年~)以降の韓国人の対北朝鮮認識について、韓国で制作された映画を手掛かりに分析したものである。映画分析という手法から、韓国人の北朝鮮観の変化を追った手法が面白い。

 

「アメリカ、ベトナムにおけるベトナム戦争の記憶-映画におけるベトナム戦争の記憶を中心にー」は、米国とベトナムにおいてベトナム戦争がどのように記憶されているのか、「戦争の記憶のされ方」の違いについて論じた論文である。両国の記念碑、文学作品、映画など多くの資料を読み込み比較分析した労作であり、オリジナリティーが十分に感じられる。

 

「環境先進国ドイツと日本-デポジット制の導入―」は、日独の廃棄物政策をデポジット制に焦点を合わせて比較検討した。日独の比較という難しいテーマに対して、ドイツ留学中に収集したドイツ語文献も使用して接近している点が特筆すべき点である。

 

「日韓の東アジア共同体構想の比較分析-新機能主義理論を用いてー」は、日韓の東アジア共同体構想について比較検討したものである。その際に、E・ハースの新機能主義理論の「スピルオーバー」という概念に注目し、両国の構想の実現可能性を論じた点、韓国語文献を使用している点が評価できる。

 

以上、いずれの論文もオリジナリティーを有しており甲乙つけるのが非常に難しかったが、結局、比較してより完成度が高かった①の論文を最優秀論文とした。

bottom of page