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2020年度卒業論文

2021年度卒業論文

「日本の領土問題:オーランド諸島とアルザス・ロレーヌ地方の事例からの考察」

日本の領土問題、とくに、北方領土問題と尖閣問題に焦点を当て、その解決の方策を探った論文である。すでに領土問題を解決した海外の事例を参考にした点が興味深い。北方領土についてはオーランド諸島の事例、尖閣に関してはアルザス・ロレーヌ地方の事例を参照している。アルザスの事例に関しては、分析が薄く時間切れの感があったのが残念である。

 

「台湾・韓国から見る植民地支配期の記憶の継承と対日イメージ構築への影響」

台湾と韓国における日本植民地時代についての「記憶のされ方」を、両国の教科書記載内容と博物館展示解説から比較検討している。台湾が持つ対日イメージと韓国が持つ対日イメージの差に注目し、両国の歴史認識問題について考察している点にオリジナリティーがある。Covid-19のため、現地調査して課題に踏み込めなかった点はやむをえないだろう。

 

 

「日華断交後の沖縄と台湾の交流の変化―沖縄の資料を中心に―」

先行研究の薄い日台断交後の沖縄と台湾の関係に着目した点で興味深い。史料が見つかりづらい中でも、八重山に住む台湾人が日華断交後どうなったかについて言及し、「八重山の台湾人が1973年から1975年に大量帰化していることから断交の影響と推察されてきたが、調査の結果、沖縄の日本復帰が大きな影響をもたらしていることが分かった」と新たな知見を提供している。

 

「外交政策の変更―国交断絶という政策選択」

台湾が経験した3例の英台断交(1950年)、日台断交(1972年)、韓台断交(1992年)について、D・ウェルチの対外政策変更の理論を用いて分析している。事例の抽出の仕方、および事例の比較においてオリジナリティーが発揮されている。とくに、英台断交の事例が興味深い。また、国際関係論の理論への応用についても考察を試みている点が評価できる。

 

「沖縄県における子どもの貧困問題解決へ向けた取り組み」

沖縄県と那覇市のこどもの貧困問題への解決にむけた取り組みを考察している。全体的に沖縄県と那覇市の報告書の紹介に終わっている感があり、比較の部分が考察の中で詳しく展開されていないのが残念である。北部市町村の事例を取り上げ、那覇市と比較する方向があってもよかったかもしれない。

 

「沖縄県におけるウチナーグチ普及政策―海外の政策と比較して有効な政策を探る」

ウチナーグチの普及政策について、アイヌ語、ハワイ語、マオリ語の普及政策と比較し論じている点が興味深い。比較から沖縄の事例について深く考えることを啓発する論文である。ハワイ語とマオリ語については、資料の収集が薄くなった感がある。英文資料の収集がさらにできていれば、興味深い論文になったであろう。

 

「アリソンモデルと「歴史の教訓」論から見る米露軍事介入と撤退:クリミア・アフガニスタン・イラクを事例として」

 

ロシアのクリミア介入、米国のアフガン、イラク介入と撤退について、G・アリソンの政策決定のモデルと、A・メイの「歴史の教訓」論の観点から「決定の本質」について切りこむことを試みている。その分析手法にオリジナリティーを出す工夫がみられるものの、時間切れになった感があるのは残念な点である。

 

「映画産業をめぐる韓国政治 ―社会派映画の分析を通して―」

韓国の金大中政権から文在寅政権に至る文化コンテンツ政策のうち、政治系の社会派映画に着目し、映画製作時から公開後の政治的背景や政権との関わりについて研究したもの。韓国語の文献を駆使していることにより重厚な分析となっている。

 

「⾦融機関の現状と今後  ―沖縄の銀⾏を事例として―」

 

グローバル化やIT革命が進展する中で、沖縄の地方銀行の現状と将来について分析した論文である。丹念に資料を読み込んでまとめられているが、先行研究のまとめに終わってしまった部分がある。

 

「中国・北朝鮮要因からみる日米同盟と米韓同盟の存続と解消 ―同盟形成・解消理論に当てはめて―」

日米同盟と米韓同盟が解消される可能性について、同盟に関する理論的研究を援用し、中国・北朝鮮要因に焦点を合わせ比較検討するという、難しいテーマに取り組んだ点が評価できる。同盟研究理論については英語文献のさらなる読み込みがあればよかったが、学部生論文としてみれば、レベルが高い論文であると言えるだろう。

 

「普天間飛行場基地機能の代替可能性について ––国内移設、国外移設、基地の共同使用の観点から––」

普天間飛行場の基地機能が辺野古以外の土地にも移設可能という仮説について軍事的視点から検証している。結局、この問題の本質は、軍事戦略的問題ではなく、政治問題であることを逆に照射しているのが興味深い。

 

「戦争の記憶 —WWⅡ戦争記念日の国際比較―」

米・日・独・露・ポーランド・韓国の戦争記念日において、各国がどのように戦争を記憶しているか検証し比較考察している。戦勝国、敗戦国、大国と小国、それぞれの差異に注目することから新たな知見を提供している。

 

 

「記憶継承の在り方と当事者意識形成の再考 ―ひめゆり平和祈念資料館の変遷を事例に―」

ひめゆり平和祈念資料館が未来世代への記憶の継承という課題にどのように取り組んでいるか、ひめゆり側の資料を丹念に捕捉し分析している点が評価できる。他の国内の平和資料館でも同様の課題に直面しており、それらとの比較の視点もあれば、さらによかった。

 

 

「沖縄、ハワイ、台湾の新型コロナウイルス初期対応比較(2019年12月~2020年8月)」

沖縄、ハワイ、台湾のコロナ対応について比較検討した論文である。研究の視点にユニークさがある。それぞれの地域の政治的決定のプロセスの違いなどにも着目し、英語や中国語の文献を駆使することができていれば、さらに分析が深まったであろう。

 

「日韓歴史共同研究の再検討」

日韓両政府の主導による歴史共同研究事業がなぜ頓挫したのか、情報開示請求もおこない一次史料から接近した労作。座長の選任について着目した点が評価できる。新知見を示している。

 

 

「核ミサイル『メースB』配備から見る日・米・沖縄の権力構造」

メースBの配備時と、さらにはキューバ危機時のメースBの状況について、日本政府、米軍文書、沖縄県公文書や地元紙の分析から、当時の日・米・沖縄の相互関係について分析した好論文である。新たに公開された米軍文書を読み込んでいる点が評価できる。一次史料からの分析によって深い分析となっている。

 

「在沖米軍基地の一部台湾移設案実現阻害要因 —ジョン・ボルトンが唱えるボルトン構想の阻害要因について—」

おそらく誰も検証したことがないテーマである「なぜボルトン構想(在沖米軍基地の一部台湾移設案)が挫折したか?」について、仮説を提示しながら検証していった労作である。中国語の文献も使用した点が評価できる。米政権の政策決定プロセスや主要閣僚間の関係性についての分析があれば、さらに好論文となったであろう。

 

「日韓の対北朝鮮融和政策の比較分析(1998-2003)」

2000年前後に見られた日韓双方の対北朝鮮接近政策において、どのような違いがあるか比較検討している。韓国語新聞からの引用があるのは評価できる。韓国側の研究論文も駆使できていれば、このテーマにさらに深く接近できたであろう。

 

「イラク戦争の決定の本質」

米国のイラク戦争開戦について、敵のイメージ論(グラッドストーン)およびウォルツの分析のレベル分けを援用しながら、「決定の本質」に接近した論文である。そのアプローチ方法において、オリジナリティを出しており興味深い考察を展開している。

 

 

「日本の平和博物館の今後への提言 ―広島・長崎・沖縄の比較より―」

広島の原爆ドーム、長崎の原爆資料館、沖縄の平和祈念資料館、及び、ひめゆり資料館を調査し比較検討しながら、平和博物館の在り方について考察した論文である。コロナ禍の中、なかなか現地調査が難しい状況のなかにありながらも、論文を完成した点を評価したい。

 

 

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