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卒業論文2013

2013年度は、以下の7本の卒業論文が提出された。

 

「中ソ同盟崩壊の要因とは:同盟に関係する論説から」は、1960年代の中ソ同盟の崩壊について、その要因を理論的および歴史的に探ったものである。中ソ同盟の崩壊がどのような要因に起因するのかについて、国際関係レベル・国内政治レベル・政策決定者レベルのレベル分けによって整理し、先行研究の再検討から新たな知見を付け加えようとした。残念なのは、一次資料の収集が薄かった点であるが、卒論レベルに十分に達している。

 

「ソフト・パワー論の検証:アジア地域5カ国の比較から」は、昨今注目を浴びているソフト・パワーとパブリック・ディプロマシーに関して、ブータン・マレーシア・韓国・中国・日本のそれを研究したものである。これら大国と小国の比較分析から、「ソフト・パワーがハード・パワーに依存するのか」という命題について、学界内での議論にも投げかけうる考察をおこなった。オリジナリティ-溢れる野心作である。

 

「沖縄フィルムオフィスの課題と可能性」は、フィルムコミッションの「沖縄フィルムオフィス」に焦点をあて、その現状と問題点を国内の他地域のフィルムコミッションと比較しながら、探った論文である。現地調査を行いながら、沖縄が観光立県として対応しなければならない問題の分析と提言をおこなっており、読ませるものとなっている。

 

④★「アメリカ国民の視点からみた冷戦起源の考察:映画における認識と世論調査を中心に」は、冷戦の起源について、米国民の当時の認識に注目し、映画分析という斬新な手法で取り組んだ非常にオリジナリティー溢れる論文である。米国市民の意識を探るために、映画のみならず、世論調査など英文資料も使用しながら取り組んだ点には、勉強量の豊富さも汲み取れる。また、分析も非常に重厚なものとなっている。

 

「国際連合の難民支援枠組みの変容要因分析:個人・組織・国際レベルから」は、緒方貞子国連高等難民弁務官時代にUNHCRの難民保護がどのような要因によって変化したのかについて、「緒方貞子個人」、「国連組織」、「国際関係の変動」というレベル分けをしながら分析したものである。非常に興味深いテーマで先行研究も薄い分野に果敢に取り組んだことは評価できるが、その分、時間切れになった側面も否めない。

 

「基地に対する住民の認識の違い:佐世保、岩国、普天間を例に」は、米軍基地を有する基地の町である佐世保、岩国、普天間の基地に対する住民感情を比較分析したものである。テーマの設定自体からオリジナリティーのあるものであるが、沖縄の地元紙のみならず、中国新聞や長崎新聞などその他の地元紙を捕集し分析したことは高く評価できる。

 

「沖縄の自治体外交と対韓国関係の変化」は、沖縄県および沖縄の市町村の韓国への自治体外交について分析したものである。先行研究が薄い分野であるため、ほぼ自力で調査しなければならなかったと思えるが、これに対して、詳細に地元紙の記事を分析し、また、留学の成果として韓国語の資料なども論文に織り込んで分析した点は高く評価できる。

 

いずれの論文もオリジナリティーを出すために果敢に挑戦していて、3年次のゼミ論より大きく成長を感じさせるものであった。とくに、②③④論文は勉強量の多さを感じさせるもので、優秀論文の選定には非常に悩んだが、④の論文を最優秀論文とした。 

卒業論文2014 

2014年度は、以下の8本の卒業論文が提出された。

 

「日米同盟、韓米同盟からみる日韓関係の展望~リアリズム、リベラリズム、コンストラクティヴィズムを用いて」は、日米同盟と韓米同盟を国際関係の理論を用いて分析し比較したものである。留学の成果も活かし韓国語の文献も駆使した点にも好感がもてる。

「日本人にとって「核」とは何か~映画、漫画等から考察する核エネルギーに対する認識の変容」は、映画と漫画分析という手法から日本人の核認識を探ろうとしたもので、そのユニークな手法が特筆に値する。

 

「2009年のイランにおける暴動の分析~2005年と2009年の大統領選挙の比較を用いて」は、2009年のイラン大統領選挙時の民衆暴動を2005年の大統領選挙時のイラクの社会情勢と比較して分析したもので、アラビア語の文献を使用した点が評価できる。

 

「日韓の「慰安婦」問題の解決に向けて~アジア女性基金の検証を中心に」は、慰安婦問題の解決に向けて発足された「アジア女性基金」という組織に焦点を当てた論文である。韓国に留学していた成果として韓国語の文献も使用しており、また、ユニークなテーマと切り口である。

 

⑤★「台湾と中国のパブリック・ディプロマシー戦略~対アメリカへの手法を中心に」は、台湾と中国が米国ワシントンDCでどのようにパブリック・ディプロマシーを展開しているか分析した論文で、視角の独自性もそうだが、留学の成果を生かして多くの中国語文献からも研究を深めた好論文である。

 

「外交専門誌『FORIGN AFFAIRS REPORT』における対イラン及び対北朝鮮認識~冷戦後の論考分析」は、米国の外交分析を斬新な手法で行った論文である。『フォーリン・アフェアーズ誌』に注目した部分が独自の視点となっている。

 

「ピンポン外交とは何だったのか~ピンポン外交と分析のレベル分けから考察する」は、米中和解におけるピンポン外交の役割に注目した研究で、米中日トライアングルの国際関係という難しいテーマに挑戦し分析した点で評価できる。

 

「理想の平和博物館を考える~ドイツの日本の比較から」は、ドイツと日本の平和に関する博物館の比較分析から、理想の平和博物館の実現に向けて提言をおこなうという、おそらくまだ誰もやったことのない視点からの意欲作である。

 

いずれの論文もオリジナリティーを出すために果敢に挑戦していて、3年次のゼミ論より大きく成長を感じさせるものであった。また、留学した学生は現地で学んだ語学を卒業論文に十分活かしてもいた。優秀論文を決めるには正直非常に迷ったが、⑤の論文を最優秀論文とした。  

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